大判例

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名古屋地方裁判所 平成9年(わ)144号・平9年(わ)145号・平9年(わ)285号・平9年(わ)286号・平9年(わ)437号・平9年(わ)508号・平9年(わ)509号・平9年(わ)560号

右四名に対する各法人税法違反、所得税法違反、相続税法違反、被告人松本忠昭に対する恐喝被告事件について、当裁判所は、次のとおり判決する(公判出席検察官西村尚芳。被告人松本忠昭につき弁護人城正憲、宮道佳男、浅賀哲。被告人金炳大につき弁護人鈴木順二。被告人松木一也につき弁護人太田寛。被告人松本成功つき弁護人成田龍一)。

主文

一  被告人松本忠昭を懲役三年六月及び罰金二〇〇〇万円に処する。

被告人金炳大を懲役二年及び罰金二〇〇万円に処する。

被告人松木一也を懲役二年及び罰金一八〇万円に処する。

被告人松本成功を懲役一年六月に処する。

二  被告人松本忠昭に対して、未決勾留日数中六〇日をその懲役刑に算入する。

三  被告人松本忠昭においてその罰金を完納することができないときは、金八万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

被告人金炳大及び松木一也においてその罰金を完納することができないときは、いずれも金五万円を一日に換算した期間その被告人を労役場に留置する。

四  被告人金炳大及び松木一也に対し、いずれもこの裁判確定の日から四年間、それぞれの懲役刑の執行を猶予する。

被告人松本成功に対し、この裁判確定の日から四年間、その刑の執行を猶予する。

五  訴訟費用は被告人松木一也の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

第一  被告人松本忠昭は、佐藤昭一と共に、三重県桑名市大字北別所四〇七番地に居住し不動産賃貸業を営む古村豊治から依頼されて同人の所得税の申告手続に関与したが、佐藤昭一及び古村豊治と共謀の上、古村豊治の所得税を免れようと企て、架空の経費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、古村豊治の平成五年分の実際の総所得金額が一四二二万八二〇〇円で、分離課税による長期所有土地にかかる譲渡所得の金額が一億一一六九万三九八〇円であったのに、平成六年三月一五日、三重県桑名市大字江場七番地の六所在の所轄桑名税務署において、情を知らない平岩宏昭を介して、同税務署長に対し、その総所得金額が一四二二万八二〇〇円、分離課税による長期所有土地にかかる譲渡所得の金額が五一六九万三九八〇円で、これに対する所得税額が一六〇四万八六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同人の正規の所得税額三四〇四万八六〇〇円と申告税額との差額一八〇〇万円を免れた(別紙一の1修正損益計算書、別紙一の2脱税額計算書参照)。

第二  被告人松本忠昭、同金炳大、同松本成功及び松木一也の四名は、三重県桑名市寿町三丁目一〇番地に本店を置き不動産賃貸業等を目的とする桑寿商業開発株式会社の代表取締役として同社の業務全般を統括していた古村豊治から依頼されて同社の法人税の確定申告手続に関与したが、古村豊治と共謀の上、同社の前記業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の株式評価損を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、平成五年七月一日から平成六年六月三〇日までの事業年度における同社の実際の所得金額が二億二七〇五万三八二三円であったのに、法人税の確定申告期限の経過後である平成六年九月一三日、所轄の前記桑名税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の欠損金額が七二九三万一一一七円で、課税土地譲渡利益金額が一八七万円であり、これに対する法人税額が一四万六一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同社の右事業年度における正規の法人税額八四五三万九〇〇円と右申告税額との差額八四三八万四八〇〇円を免れた(別紙二の1修正損益計算書、別紙二の2脱税額計算書参照)。

第三  被告人松本忠昭、同金炳大、同松本成功及び松木一也の四名は、中丸隆之と共に、故柴田照夫(平成六年二月六日死亡)の配偶者であって同人の財産を相続した愛知県高浜市芳川町一丁目二番地八八に居住する柴田芳子の代理人として柴田芳子の相続税申告手続を行った柴田永から依頼されて、柴田芳子の相続税の申告手続に関与したが、中丸隆之及び柴田永と共謀の上、柴田芳子の相続税を免れようと企て、柴田照夫が他から二億五〇〇〇万円の債務を負担していた旨仮装するなどして所得を秘匿した上、平成六年一〇月二〇日、愛知県刈谷市神明町三丁目五〇一番地所在の所轄刈谷税務署において、同税務署長に対し、柴田芳子の相続財産にかかる実際の課税価格が三億六九三九万円で、これに対する相続税額は一八〇三万二五〇〇円であったのに、右仮装債務二億五〇〇〇万円のうち一億二五〇〇万円を承継したことなどにより課税価格は二億四九〇七万円となり、これに対する相続税額は零円である旨の虚偽の相続税申告書を提出し、もって、不正の行為により、柴田芳子の正規の相続税額一八〇三万二五〇〇円を免れた(別紙三の1相続財産の内訳、別紙三の2脱税額計算書参照)。

第四  被告人松本忠昭、同金炳大、同松本成功及び同松木一也の四名は、愛知県豊橋市東細谷町字一リ山九番地に居住し農業を営んでる山本勝一から依頼されて同人の所得税の申告手続に関与したが、山本勝一と共謀の上、山本勝一の所得税を免れようと企て、架空の経費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、山本勝一の平成六年分の実際の総所得金額が一二六万六二五五円で、分離課税による長期所有土地にかかる譲渡所得の金額が八一五四万八〇四〇円であったのに、平成七年三月八日、愛知県豊橋市大国町一一一番地所在の所轄豊橋税務署において、同税務署長に対し、その総所得金額が一二六万六二五五円、分離課税による長期所有土地にかかる譲渡所得の金額が三六五四万八〇四〇円で、これに対する所得税額が八三三万五九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、山本勝一の正規の所得税額二一八三万五九〇〇円と申告税額との差額一三五〇万円を免れた(別紙四の1修正損益計算書、別紙四の2脱税額計算書参照)。

第五  被告人松本忠昭及び同金炳大は、愛知県知多郡東浦町大字藤江字六反田四二番地に居住し繊維製品の製造販売業を営んでいた新美昭康から依頼されて同人の所得税の申告手続に関与したが、新美昭康と共謀の上、新美昭康の所得税を免れようと企て、架空の経費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、新美昭康の平成六年分の実際の総所得金額が一三〇万五三七五円で、分離課税による長期所有土地にかかる譲渡所得の金額が一億七六二万五五七二円であったのに、平成七年三月一四日、愛知県半田市宮路町五〇番地の五所在の所轄半田税務署において、同税務署長に対し、その総所得金額が一三〇万五三七五円(確定申告書に一三〇万三三七五円と記載されている部分は、誤記と認められる。)、分離課税による長期所有土地にかかる譲渡所得の金額が六二一四万六〇一七円で、これに対する所得税額が一六五八万五二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、新美昭康の正規の所得税額三〇二二万八六〇〇円と申告税額との差額一三六四万三四〇〇円を免れた(別紙五の1修正損益計算書、別紙五の2脱税額計算書参照)。

第六  被告人松本忠昭、同金炳大及び同松木一也は、小林泰夫と共に、愛知県岡崎市美合町字平地四八番地三に本店を置き学習塾の経営等を目的とする株式会社学志館の代表取締役であった神尾昌夫から依頼されて同社の法人税の確定申告手続に関与したが、小森泰夫及び神尾昌夫と共謀の上、同社の前記業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の事業所拡大費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、平成六年三月一日から平成七年二月二八日までの事業年度における同社の実際の所得金額が二億五九五八万五二六二円であったのに、平成七年五月一日、愛知県岡崎市明大寺本町一丁目四六番地所在の所轄岡崎税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一億九五八万五二六二円で、これに対する法人税額が四〇二八万三二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同社の右事業年度における正規の法人税額九六五三万三二〇〇円と右申告税額との差額五六二五万円を免れた(別紙六の1修正損益計算書、別紙六の2脱税額計算書参照)。

第七  被告人松本忠昭は、株式会社ジャパンエナジー名古屋支店からガソリンスタンドの建設を請け負っていた株式会社三喜建設の代表取締役三喜畑秀樹から、同ガソリンスタンド建設用地の地権者の一人から同意が得られず、そのため、同ガソリンスタンド建設に必要な三重県知事の開発許可が受けられないので、三重県と交渉して右許可を取得するよう依頼されたものの、これを実現することができず、同ガソリンスタンドは、結局、右三喜建設の社員らの尽力によって三重県知事から開発許可を得て開業した。ところが、被告人松本忠昭は、右三喜畑からその成功報酬名下に金員を交付させようと企て、平成七年九月二八日ごろ、名古屋市中区栄四丁目六番八号所在の名古屋東急ホテル一階アトリウムラウンジ「グリンデルワルド」において、同人に対し、「払わんというならそれでもいい。うちには若い衆が沢山おるし、ジャパンエナジーのスタンドの前で営業ができないようにすることだってできるぞ。一番困るのは、ジャパンエナジーじゃないか。その土地は、本来開発許可が下りないのだから、スタンドは違法に営業していることになる。我々がそのことを役所に抗議すれば、どうなるか分かっているのか。そうなれば、許可を取り消され、スタンドの営業ができなくなるぞ。お前のところのような小さな会社をつぶすのは、わけないことだぞ」などと語気強く申し向け、同人が右要求に応じなければ、前記ガソリンスタンド建設の開発許可を取り消させるなどし、株式会社三喜建設及び同人にどのような損害が生じるかもしれないものと畏怖させ、よって、平成七年一〇月九日ごろから平成八年八月九日ごろまでの間、前後一一回にわたり、同人に、名古屋市東区豊前町二丁目二九番地の四所在の株式会社三重銀行東支店に開設した被告人松本忠昭名義の普通預金口座に合計二五〇万円を振込入金させて、これを喝取した。

第八  被告人松本忠昭は、名古屋市北区浪打町一丁目四五番地所在のナビシティ浪打町二〇四号に居住し、土木建築工事の請負等を目的とする株式会社マツショー企画の代表取締役を務める傍ら、同区中切一丁目四四番地等に事務所を設け、全日本同和事業連盟中部総本部長を名乗り、納税義務者の所得税確定申告手続等に関与するなどして報酬等を得ていたが、自己の所得税を免れようと企て、

一  平成六年分の実際の総所得金額が四三〇九万九三二六円であったのに、平成七年三月一三日、名古屋市北区清水五丁目六番一六号所在の所轄名古屋北税務署において、同税務署長に対し、平成六年分の総所得金額が零円、分離課税による短期所有土地にかかる譲渡所得の金額が一三三万九一一円の損失で、これに対する所得税額が零円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の所得税一四九三万六七〇〇円を免れ、

二  平成七年分の実際の総所得金額が一億八五八万二四九八円で、分離課税による短期所有土地にかかる譲渡所得の金額が一八六万二六八五円であったのに、所得税の確定申告期限の経過後である平成八年四月三〇日、所轄の前記名古屋北税務署において、同税務署長に対し、平成七年分の総所得金額が零円、分離課税による短期所有土地にかかる譲渡所得金額が一八六万二六八五円で、これに対する所得税額が二四万五四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額四六一六万四〇〇〇円と申告税額との差額四五九一万八六〇〇円を免れ

た(別紙七の1各修正損益計算書、別紙七の2各脱税額計算書参照)。

(証拠の標目)

括弧内の記号番号は、検察官請求証拠の記号番号(番号は記録上算用数字)である。検察官に対する供述調書は「検察官調書」、司法警察職員に対する供述調書は「警察官調書」、大蔵事務官に対する供述調書である質問てん末書は「大蔵事務官調書」と記載する。

判示事実全部について

一  被告人松本忠昭の当公判廷(第一回)における供述

一  被告人松本忠昭の検察官調書(乙四五)

判示第一、第八の一の各事実について

一  被告人松本忠昭の検察官調書(乙三二)

一  古村豊治(甲六四)及び佐藤昭一(三通。甲六五ないし六七)の各検察官調書(各謄本)

一  加藤義雄の検察官調書(甲六二)

判示第一の事実について

一  平岩宏昭の検察官調書(甲六三)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲五九)、証明書(甲六〇)及び査察官調査書(甲六一)

判示第二ないし第六の各事実について

一  被告人金の当公判廷(第一回)における供述

判示第二ないし第四、第六の各事実について

一  被告人松木の当公判廷(第一回)における供述

判示第二ないし第四の各事実について

一  被告人松本成功の当公判廷(第一回)における供述

判示第二、第八の一の各事実について

一  被告人松本忠昭(二通。乙二、三)、同金(二通。乙六、七)、同松木(二通。乙一〇、一一)及び同松本成功(三通。乙一五ないし一七)の各検察官調書

一  古村豊治の検察官調書二通(各謄本。甲一四、一五)

判示第二の事実について

一  郡善治(甲九)、尾藤光則(甲一〇)、寺本喜宥(甲一一)、松岡敬次郎(甲一二)及び増田清司(甲一三)の各検察官調書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲二)、証明書(甲三)、査察官調査書三通(甲四ないし六)及び査察官報告書(甲七)

一  法人登記簿謄本(甲八)

判示第三、第四、第八の一、二の各事実について

一  被告人松本成功の検察官調書(乙二八で、謄本の乙二三と同じ)

判示第三、第八の一の各事実について

一  被告人松本忠昭(二通。乙二一、乙二二)、同金(乙二四)及び同松木一也(二通。乙二五、二六)の各検察官調書

一  柴田芳子(ただし調書上は「柴田芳子」。甲三八)、石川園子(甲三九)、神谷敏子(甲四〇)、柴田昭子(甲四一)、加藤和夫(甲四二)、柴田永(二通。各謄本で甲四六、四七)及び中丸隆之(謄本。甲四八)の各検察官調書

一  検察事務官作成の報告書(甲一七八)

一  愛知県幡豆郡一色町長作成の除籍謄本(甲一七九)

判示第三の事実について

一  柴田芳子(ただし調書上は「柴田芳子」。甲三七)、岩本巌(甲四三)、黒田茂(甲四四)及び杉浦仁一(甲四五)の各検察官調書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲三〇)、証明書(甲三一)、査察官調査書四通(甲三二ないし三五)及び査察官報告書(甲三六)

判示第四、第八の二の各事実について

一  被告人松本忠昭(乙二七)、同松本成功(乙二九)、同金(乙三〇)及び同松木(乙三一)の各検察官調書

一  山本勝一の検察官調書(謄本。甲五七)

判示第四の事実について

一  前田憲昭(甲五四)、石橋俊定(甲五五)及び山本やす子(甲五六)の各検察官調書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲五一)、証明書(甲五二)及び査察官調査書(甲五三)

判示第五、第八の二の各事実について

一  被告人松本忠昭(二通。乙三三、三四)及び同金(乙三五)の各検察官調書

一  新美昭康の検察官調書(二通。各謄本で甲七七、七八)

判示第五の事実について

一  外園茂(甲七九)、黒田茂(甲八〇)及び梅木衛(甲八一)の各検察官調書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲六九)、証明書(甲七〇)及び査察官調査書七通(甲七一ないし七六、一七七)

判示第六、第八の二の各事実について

一  被告人松本忠昭(乙一八)、同金(乙一九)及び同松木(乙二〇)の各検察官調書

一  神尾昌夫(二通。甲二五、二六)及び小林泰夫(二通。甲二七、二八)の各検察官調書(各謄本)

判示第六の事実について

一  吉田俊雄(甲二二)及び鈴木人史(甲二三)の各検察官調書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲一七)、証明書(甲一八)及び査察官調査書二通(甲一九、二〇)

一  法人登記簿謄本(甲二一)

判示第七、第八の二の各事実について

一  被告人松本忠昭の警察官調書(二通。乙四〇、四一)

一  株式会社三重銀行東支店作成の「回答書」と題する書面(甲九〇)

判示第七の事実について

一  被告人松本忠昭の検察官調書三通(乙四二ないし四四)及び警察官調書四通(乙三六ないし三九)

一  三喜畑秀樹(二通。甲八二、八三)、奥村亨(甲八五)、村田充郎(甲八八)、山本徹(甲九二)、金炳大(相被告人。甲九七)及び小平憲幸こと小平則幸(甲九九)の各検察官調書

一  三谷隆(甲九三)、江上洋子(甲九四)及び松本成功(相被告人。甲九八)の各警察官調書

一  司法警察職員作成の写真撮影報告書(甲一〇〇)

一  三重県北勢県民局鈴鹿土木事務所長作成の「捜査関係事項照会書に対する回答」と題する書面(甲九六)

一  検察事務官作成の電話聴取書(甲九一)

一  法人登記簿謄本(甲八六)

判示第八の一、二の各事実について

一  被告人松本忠昭の検察官調書五通(乙四六ないし五〇)

一  田中克己(甲一四〇)、池田勝光(甲一四四)、中山奉一こと全奉一(甲一六二)、松本成功(相被告人。謄本で甲一六三)、松木一也(相被告人。甲一七三)、松本亜香里こと松本民世(二通。甲一七四、一七五)及び長谷川明子こと朴明子(甲一七六)の各検察官調書

一  下野恵(二通。甲一四六、一四七)、石川謙治(二通。甲一六四、一六五)、鈴木純市(甲一六六)、佐藤昭一(甲一六九)及び山内明(二通。甲一七一、一七二)の各大蔵事務官調書

一  大蔵事務官作成の査察官調査書二三通(甲一〇八ないし一一八、一二〇ないし一二四、一二六ないし一三二)

第八の一の事実について

一  小倉壽夫(甲一三三)、片桐充康(甲一四二)、木村信文(甲一五七)、宇野聰司(甲一五九)及び光岡新吾(甲一六〇)の各検察官調書

一  伊藤昌弘の大蔵事務官調書(甲一五四)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲一〇四)、証明書(甲一〇六)、査察官調査書(甲一一九)及び査察官報告書(甲一五六)

判示第八の二の事実について

一  岩堀和彦(甲一三四)、狩野美智子(二通。甲一三五、一三六)、近藤久仁子(甲一三七)、榊原太一(甲一三八)、安本永子こと朴永子(甲一三九)、伊藤俊夫(甲一四一)、塚本喜久子(甲一四三)、小平則幸(甲一四五)、小寺芳郎(甲一五八)及び八木隆司(甲一六一)の各検察官調書

一  島添栄治(甲一四八)、松下弘明(甲一四九)、河合英孝(甲一五〇)、青木泰樹(甲一五一)、北川裕(甲一五二)、原正義(甲一五三)、清水清正(甲一五五)、小川禎二(甲一六七)、白川雄三(甲一六八)及び池田新平(甲一七〇)の各大蔵事務官調書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲一〇五)、証明書(甲一〇七)及び査察官調査書(甲一二五)

(法令の適用)

一  罰条

被告人松本忠昭の判示第一の所為、被告人松本忠昭、同金、同松木及び同松本成功の判示第四の所為並びに被告人松本忠昭及び同金の判示第五の所為は、それぞれ所得税法二三八条一項(被告人松本忠昭の関係では更に情状により同条二項)、平成七年法律第九一号による改正前の刑法(以下「改正前の刑法」という。)六五条一項、六〇条に該当する。

被告人松本忠昭、同金、同松木及び同松本成功の判示第二の所為並びに被告人松本忠昭、同金及び同松木の判示第六の所為は、それぞれ法人税法一五九条一項(被告人松本忠昭の関係では更に情状により同条二項)、改正前の刑法六五条一項、六〇条に該当する。

被告人松本忠昭、同金、同松木及び同松本成功の判示第三の所為は、相続税法六八条一項(被告人松本忠昭の関係では更に情状により同条二項)、改正前の刑法六五条一項、六〇条に該当する。

被告人松本忠昭の判示第七の所為は刑法二四九条一項に該当する。

被告人松本忠昭の判示第八の一、二の各所為は、それぞれ所得税法二三八条一項、二項(情状による。)に該当する。

二  刑種の選択

被告人松本忠昭、同金および同松木の関係で、それぞれ関係する罪(ただし、被告人松本忠昭の関係で判示第七の罪を除く。)につき、いずれも懲役刑及び罰金刑を選択する。

被告人松本成功の関係で、関係する罪につきいずれも懲役刑を選択

三  併合罪の処理

被告人松本忠昭の関係で、懲役刑について刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(最も重い判示第七の罪の刑に法定の加重)、罰金刑について同法四八条(懲役刑と併科し、判示第七の罪を除く関係する各罪所定の罰金額を合算)

被告人金の関係で、懲役刑について改正前の刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重)、罰金刑について同法四八条二項(関係する各罪所定の罰金額を合算)

被告人松木の関係で、懲役刑について改正前の刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重)、罰金刑について同法四八条二項(関係する各罪所定の罰金額を合算)

被告人松本成功の関係で、改正前の刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

四  未決勾留日数の算入

被告人松本忠昭の関係で刑法二一条

五  労役場留置

被告人松本忠昭の関係で刑法一八条、被告人金及び同松木の関係でそれぞれ改正前の刑法一八条

六  刑の執行猶予

被告人金、同松木及び同松本成功の関係で、それぞれ改正前の刑法二五条一項

七  訴訟費用の負担

被告人松木の関係で、刑事訴訟法一八一条一項本文

(量刑の事情)

一  全日本同和事業連盟(全日同)中部総本部は、被告人松本忠昭が組織し、同和の団体であることを誇示したり、その威勢を示して、依頼者のために、官公庁に働き掛けて各種許認可手続を有利に運ばせたり、脱税を請け負い、税務署に対して税務調査を控えさせたりして、その報酬を得ていたが、本来の同和事業活動を行なわない、いわゆる「えせ同和団体」であった。

被告人松本忠昭は、右全日同中部総本部本部長を名乗り、配下の者を使い、右の事業活動を主宰していた者、被告人松本成功は、被告人松本忠昭の長男で、同被告人から、全日同中部総本部の書記長、次いで副本部長の肩書を与えられ、同被告人の指示に従い、全日同中部総本部の右事業活動に関与していた者、被告人金は、不動産関係の仕事をしていて被告人松本忠昭と知り合い、平成六年八月ごろに同被告人から仕事の手伝いをするように誘われ、そのころ、同被告人に被告人松木を紹介し、同年一〇月ごろから被告人松本忠昭の下で本格的に働くようになった者、被告人松木は、元税務署職員で、その後民間会社に勤務したりした後、決算書や税務関係の申告書の作成等を行なう経営コンサルタントの業務を営んでいたが、知人である被告人金の紹介で被告人松本忠昭を知り、同被告人の依頼を受けて、その指示に従って全日同中部総本部の関係する租税申告書類の作成をしていた者である。

本件犯行のうち、判示第一ないし第六の各税法違反の犯行は、前記のような全日同中部総本部の事業活動の名の下に、いずれも被告人松本忠昭を中心として、判示第二ないし第四については被告人金、同松木、同松本成功が、判示第五については被告人金が、判示第六については被告人金及び同松木がそれぞれ加担して敢行した脱税請負の事案であり、判示第七の事案は、全日同中部総本部の威力を背景に都市計画法に基づく知事の開発許可を得ようとしてこれを果たせず、成功報酬を取得できないことになった被告人松本忠昭が、全日同中部総本部の体面を守るために、依頼者に対して、その組織力や威力を誇示して、依頼者の事業を妨害する旨脅迫して金員を脅し取った恐喝の事案であり、判示第八の犯行は、被告人松本忠昭が、こうした事業活動等によって多額の利得をしながら、自らの所得についても脱税をした所得税法違反の事案である。そして、このうち、判示第一ないし第六の各税法違反の犯行は、個人四名、法人二社の納税義務者から報酬目当てに脱税を請け負い、架空の経費や株式評価損を計上したり、架空の債務負担を仮装するなどして、虚偽過少の申告書を作成した上、全日同中部総本部の威力を背景に税務署にその受理を求め、総額約二億三〇〇万円余をほ脱したもので、ほ脱率も平均すると約七割に達しており、犯行が職業的に敢行されていることも併せ考慮すると、租税ほ脱犯のなかでも極めて悪質な犯行といわなければならない。

二  進んで、各被告人の個別の情状を指摘する。

1  被告人松本忠昭について

被告人松本忠昭は、本件一連の脱税事犯の主犯であり、おおむね脱税額の三割を報酬として取得することを取り決めて、依頼者から脱税を請け負い、他の共犯者に指示して、全日同中部総本部の勢力を誇示したり、その威勢を示して前示のように虚偽過少の申告を行うことで二億三〇〇万円余の多額の税をほ脱した。そして、合計して約八七〇〇万円近くに上る多額の報酬を受け取り、そのうちの一部を共犯者に報酬として分け与えたり、脱税が発覚した後に依頼者に返還しているものの、その多くを自らが取得している。また、前記恐喝事件は、全日同中部総本部の威力を誇示して依頼者から二五〇万円もの金員を喝取したものであり、自らの所得税法違反の事件も、ほ脱額が二期合計で六〇〇〇万円を超える多額で、ほ脱率も九九パーセントと高率であり、犯行動機にも特に酌むべき点はない。そうすると、被告人松本忠昭の罪責は重大である。

他方、被告人松本忠昭について量刑上酌むべき点として、自己の行為を率直に認めて反省していること、前科がないこと、全日同に対して退会の意思を表明し、全日同中部総本部の組織を解散していること、恐喝事件については、被害弁償をして、被害者の宥恕を得ていること、自己の所得税法違反の事件については、修正申告をし、差し当たって工面できた三〇〇〇万円を予納し、自宅マンションを国税局へ担保として差し入れていること、知人や妻が今後の更生に協力することを申し出ていること、ヘルニア等の持病があり、必ずしも健康に勝れないことなどの事情が存する。

2  被告人金について

被告人金は、判示第二ないし第六の各税法違反事件に加担したものであるが、税務知識に富む被告人松木を被告人松本忠昭に紹介し、必要な書類や資料を入手して被告人松木に届けたり、被告人松木が作成した申告書類を被告人松本忠昭に届けるなど、右両被告人間の連絡役を務めたほか、判示第三の事件では、被告人松木の体調が悪く、そのため、同被告人の作成した書類が訂正箇所が多くあるなど不体裁のものであって、これをそのまま税務署に提出すると不正をしていることが発覚する怖れがあったことから、知人の税理士にその清書を依頼し、判示第四の事件では、自ら被告人松本忠昭に対して、脱税の顧客で共犯者でもある山本勝一を紹介し、積極的に脱税工作に関わり、判示第五の事件では、被告人松本忠昭の指示を受けて確定申告書原案に架空経費を書き込んだ上、体調の勝れなかった被告人松木から同申告書の作成を断られると、前記知人の税理士にその清書や検算を依頼し、さらに、判示第六の事件では、共犯者の小林泰夫、神尾昌夫らと共に所轄税務署に出掛けて、全日同中部総本部本部長補佐の肩書のある自己の名刺を示して応対した同税務署の総務課長に対して圧力をかけるなどしており、被告人金が果たした役割は軽視できない。被告人金は、このようにして右各脱税請負事件に加担したもので、関与した事件のほ脱額は合計一億八五〇〇万円余に及ぶ。加えて、被告人金は、犯行に加担したことにより、報酬と貸金名目の金員を合わせて数百万円を受け取っており、そのうちの一部を脱税が発覚した後に依頼者に返還しているものの、なお相当額の財産的利益を受けているから、その刑事責任は重い。

他方、被告人金について量刑上酌むべき点として、自己の犯行を率直に認めて反省していること、前科がないこと、被告人松本忠昭の下で、その指示に従って行動しており、果たした役割は従属的なものであること、雇い主や妻が更生に協力することを申し出ていることなどの事情が存する。

3  被告人松木について

被告人松木は、判示第二ないし第四、第六の各税法違反事件に加担したものであるが、元税務署職員でありながら、その有する税務知識を悪用して、脱税において重要な虚偽の確定申告書を作成する役割を加担しており、特に、判示第二の犯行では、自ら架空の株式評価損を計上する方法を考え出すなど、その果たした役割は大きい。そして、被告人松木が関与した事件のほ脱額の総額は一億七二〇〇万円余に及ぶ。加えて、被告人松木は、犯行に加担したことにより、その報酬として二三八万円を受け取っており、そのうちの一部を更に被告人金に報酬として交付していることを考慮しても、なお相当の利得をしているもので、その刑事責任は重い。

他方、被告人松木について量刑上酌むべき点として、自己の犯行を率直に認めて反省していること、前科がないこと、被告人松本忠昭の下で、その指示に従って行動したもので、果たした役割は従属的なものであること、前妻が更生に協力することを申し出ていることなどの事情が存する。

4  被告人松本成功について

被告人松本成功は、判示第二ないし第四の各税法違反事件に加担したものであるが、全日同中部総本部の書記長あるいは副本部長の肩書を有し、所轄税務署に赴き、全日同中部総本部の威勢を示して虚偽過少の申告書を提出し受理させる役割を分担しており、特に、判示第四の事件では、応対した税務署職員から計上した経費の不当性を指摘されるや、「どうして認められないんだ」などと怒号して申告書を受理させるなど、その果たした役割は軽視できない。そして、被告人松本成功が関与した事件のほ脱額の総額は一億一五〇〇万円余に及ぶ。被告人松本成功は、犯行に加担したことにより、まとまった報酬は取得していないが、それは本件のような違法な行為等により多額の利得をしていた父親である被告人松本忠昭から事業資金等の援助を得ていたことによる。そうすると、被告人松本成功の刑事責任も重い。

他方、被告人松本成功について量刑上酌むべき点として、自己の犯行を率直に認めて反省していること、業務上過失傷害罪により罰金刑に処せられたほか前科がないこと、被告人松本忠昭の下で、その指示に従って行動したもので、果たした役割は従属的なものであること、贖罪寄付をしていること、全日同の組織との関係を断っていること、義父が更生に協力することを申し出ていることなどの事情が存する。

三  以上に指摘した事情と記録にあらわれた他の諸事情を総合考慮して、被告人らに対してそれぞれ主文の刑を量定した上、被告人金、同松木及び同松本成功の三名に対して、特に刑(ただし、被告人金および同松木については懲役刑に限る。)の執行を猶予することとする。

(裁判長裁判官 三宅俊一郎 裁判官 長倉哲夫 裁判官 梅本幸作)

別紙一の1

修正損益計算書

自 平成5年1月1日

至 平成5年12月31日

<古村豊治>

<省略>

<省略>

別紙一の2

脱税額計算書

自 平成5年1月1日

至 平成5年12月31日

<古村豊治>

<省略>

(所得金額は、総合課税の所得金額及び分離課税の所得金額の加算である。)

税額の計算

<省略>

別紙二の1

修正損益計算書

自 平成5年7月1日

至 平成6年6月30日

<桑寿商業開発株式会社>

<省略>

別紙二の2

脱税額計算書

自 平成5年7月1日

至 平成6年6月30日

<桑寿商業開発株式会社>

<省略>

税額の計算

<省略>

別紙三の1

相続財産の内訳

平成6年2月6日相続開始

<省略>

<省略>

別紙三の2

脱税額計算書

<省略>

<省略>

<省略>

別紙四の1

修正損益計算書

租税犯の類型

過少申告脱税犯

自 平成6年1月1日

至 平成6年12月31日

所得金額総括表

《山本勝一》

<省略>

修正損益計算書

租税犯の類型

過少申告脱税犯

自 平成6年1月1日

至 平成6年12月31日

実際総所得

《山本勝一》

<省略>

修正損益計算書

租税犯の類型

過少申告脱税犯

自 平成6年1月1日

至 平成6年12月31日

分離課税による長期所有土地にかかる譲渡所得

《山本勝一》

<省略>

別紙四の2

脱税額計算書

自 平成6年1月1日

至 平成6年12月31日

<山本勝一>

<省略>

(上記所得金額は、総合課税の所得金額及び分離課税の所得金額を加算したものである。)

税額の計算

<省略>

別紙五の1

修正損益計算書

自 平成6年1月1日

至 平成6年12月31日

<新美昭康>

<省略>

<省略>

別紙五の2

脱税額計算書

自 平成6年1月1日

至 平成6年12月31日

<新美昭康>

<省略>

(所得金額は、総合課税の所得金額及び分離課税の所得金額の加算である。)

税額の計算

<省略>

別紙六の1

修正損益計算書

自 平成6年3月1日

至 平成7年2月28日

<株式会社学志館>

<省略>

別紙六の2

脱税額計算書

自 平成6年3月1日

至 平成7年2月28日

<株式会社学志館>

<省略>

税額の計算

<省略>

別紙七の1

修正損益計算書

自 平成6年1月1日

至 平成6年12月31日

<松本忠昭>

<省略>

<省略>

修正損益計算書

自 平成7年1月1日

至 平成7年12月31日

<松本忠昭>

<省略>

<省略>

別紙七の2

脱税額計算書

自 平成6年1月1日

至 平成6年12月31日

<松本忠昭>

<省略>

(所得金額は、総合課税の所得金額及び分離課税の所得金額の加算である。)

税額の計算

<省略>

脱税額計算書

自 平成7年1月1日

至 平成7年12月31日

<松本忠昭>

<省略>

(所得金額は、総合課税の所得金額及び分離課税の所得金額の加算である。)

税額の計算

<省略>

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